初等学部の理事長で、幼稚園の園長でもある港先生の熱い想い

大切にしなければならないもの

ペスタロッチに感化されたフレーベルは世界で初めて幼稚園を作った。その名は『キンダ‐ガーデン』である。子どもたちの庭とも、花園とも訳されている。その前にも幼児施設というのはあったらしいけれども、フレーベルの功績が大きく、幼稚園はその時に名付けられたままの『キンダーガーデン』と言っている。『花園』といった昔の人に心から敬意を表したい。幼稚園が肥沃な土壌でなければならないことを示唆しているのではないか。幼稚園もそうであるけれども、子ども自体が肥沃な土壌である。何をそこに植えようとしているのか、それは大人の責任である。

それは幼児期だけではない。児童期の前期、8歳9歳といったころまでそれは大切なことではないかと私は確信している。その発達は他者批判や他者評価が芽生えてきて、自己評価もできるという発達が確立されるころまで、その土壌は特に大切にされなければならないと思う。そのように育てられた子は、自尊心も高く、物事に前向きであって主体がしっかりと息づいている。小学校3年生か4年生だ。この頃の学習の成績にはあまり神経質になる必要はない。どのような人との関わりをしているのかということを見るようにして、いつも仲間のことの話をし笑い顔が出ていれば心配はない。あとは内燃機関が働いて自走するようになる。

早期知的教育の話が出ていて、議論をしていると賛成派は『できないよりできた方がいいでしょ』ということになる。そして極めつけは大脳生理学を持ってきて、脳の働きが一番盛んなのはこの時期であるというようなことを言う。このような根拠があるということを言われると、大体の人は反論できなくなってしまう。ニューロンとかシナプスの話をされても奥様達には理解できる人はそれほど多くはないだろうから、これに参ってしまう。

確かに脳の働きの曲線を見てみると2歳からグーンと上がってきて7歳から8歳までがピ-クになっているけれども、そのまま何年も続くけれども人によっては下降曲線になる人もいるし、上昇曲線にもなる。能の使い方には使えば使うほどよくなるという説もある。しかも2歳からの上昇曲線は、私が思うのにはドリルをやらせたり学校のまねごとをさせるために上昇するのではなく、これから生きていくためのスキルを学んでいくといったものであるのではないかと思っている。何よりも人間としての感性を磨かなくてはならないだろう。『感じる力』を素晴らしい土壌に植え付けることが何よりも大切だ。小学校低学年も同じことだ。これから京都へ行ってくる。