園長先生から
あおば台の保育
園長 塚原 裕子
幼稚園は幼児の生きる力を育むことが使命とされています。
この理念こそが最も重要で、 いかなる時代いかなる社会においても不変の真理であると信じています。
私はこの生きる力を具体的には生命力とよんでいます。
生きる力は問題解決や自己実現、判断力や決断力、愛他心や感性などがバランスよく育って、生き生きしさを持続して保ち得ることです。
内発的な問題解決は思考を高め仲間関係を良い方向へ導きます。
自己実現は自己の存在を意味し、自信の源となります。
判断力や決断力は自己実現の方向を決する時に用いられますが、遊びの豊かさこそがその原動力となります。
愛他心は他人を思いやる心。
相手の心を予測でき大切にできることです。
仲間関係が充実し、物を共有したり共感したりすることができると愛他心は育つます。
感性は感じる心。
学者や芸術家といった類は非凡の感性を持っています。
感性は回りの大人が感じる力を持っていれば、子どもは必ず呼応してくれます。
幼児教育はすぐ先の小学校の授業を先取りすることではありません 。
この子達にはもっともっと長い道程があるのですから、どんな嵐が来ても倒れない太い根っこを張らせなければなりません 。
早期知的教育が下火になったかと思っていたら、まだまだ信仰なさっている方も相当おられるということですが、得るものは多くはありません。
むしろ情緒の面では大きなマイナスとなることのほうが多いのです 。
早めに英語をやればいいという人がいます。
母国語以上に外国語を理解するということは決してあり得ないことですから、美しい日本語をたくさん教えたほうが情緒的にも絶対に良いのです 。
算数の基礎となる数の合成分解は、 お店屋さんごっこや泥んこ遊びなど、さながらの子どもの遊びの中で自然に取り入られるからこそ自然科学であるのです。
うまく早く学習させることは厳に否定されるものであると考えます。
いずれにしても生命の尊厳を両手の中にそっといただいて、大切に育んでいかなければなりません。
ご両親もそして私たちもです。
子ども本来が持つ生命力という力を借りて生きる力を十分に備えさせてあげたいと思います。
子どもはそれぞれに違った環境で育ってきたのですから、それぞれの心を汲んであげられる保育が何よりも大切なことだと思います。
大変長くなりましたが、 是非ともご理解くださいますようお願いいたします。
園長先生に聞きました
園に来られた方の質問よりピックアップしました
自由保育は学級崩壊を招くという考え方はどう思いますか。
私はあおば台が自由保育だと言ったことがありません。
あおば台は子どもの主体性を育て心の内面の育ちに力を入れている保育です。
学級崩壊はこどもの内面が暴発を起こしている現象で、日頃の抑圧や、強制や無関心が引き金になっているものだと思います。
何と言っても家庭や学校の教育力の低下が最大の原因だと思います。
現在の幼児を取り巻く環境をどのようにお考えですか。
大きく分けると、自然環境と幼児のために大人が作り出している環境と社会事象と、この三つが基本に考えられると思います。
そう考えるといずれも理想的だとは言い難いと思います。
誰もが幼児期の重要性を訴えるけれども、本気で言っているのか首をかしげたくなるばかりです。
子どもをどうしたいのか、どう育てればいいのかと言った所を真剣に議論しない。
価値観が多様化している中で、国にも家庭にもビジョンがないように感じられます。
これから園として目標としていることをお聞かせ下さい。
保育者としてのプロ意識をもった職員集団です。
一人一人の教師がしっかりとしたあおば台の子ども像を持つことができることが当面の課題です。
一口に言って子どものあるべき姿をどのようにお考えですか。
いつも前向きで素直で生き生きとして眼が輝いている子ども。
大人でもそのように生きられることが望ましいと思います。
自由にやっていると落ち着きがなくなるなどと聞いたことがあります。
”自由”という定義が人によってはっきりしていないようです。
それぞれに解釈が違うと思いますが私の”自由”は自由にやりこなせるだけの力であり、何でもかんでも好き勝手気ままになる時間を言うのではなく精神的なものからくるのです。
もしそのような自由を満喫していたのなら立派な成人になることは望めないでしょう。
人は必ずどこかで無理をしたり我慢をしたりして生きていくものだと思っています。
時代の変化の中で園長先生の考えはどう変わりましたか。
子どもたちをどう育てて行けば良いのかという基本的な保育理念は変わりません。
核家族化が進み書物による情報が氾濫し、その整理だけでも母親はクタクタです。
そのために幼稚園は正しい情報を伝える発信基地でなければなりません。
それが”どんぐりくらぶ”という1~2歳児の保育になったわけです。
あるおばあさんが言っていました。「今の若いお母さんたちは偉いもんだ。じいさんばあさんに頼らなくても結構やっていける。毎日子どもと向き合っているのは大変なことだよ。」と。
その言葉を聞いたとたん「こうやらなければだめだ」ではなく、私自身がもっとお母さんたちの中に入って「たまには息を抜きなよ」と言わなければならないのだということに気がつきました。
預かり保育も給食も、それこそ心配しないで一緒にやって行こうというアピールなのです。
今まで園長職にあって嬉しかったことや辛かったことは何でしょうか。
あおば台幼稚園の運動会は数年前から卒園児の小学校6年生がお手伝いに来てくれますが、どの子も変な癖もなく素直に育っていてとても嬉しい。
卒園児と会えることが楽しみです。子どもたちと一緒にいて辛いことはありません。
何と言っても私がお山の大将ですからね、楽しいことばかりですよ。
最後に幼児をもつご家庭に望むことがあればお聞かせ下さい。
それぞれに悩みを持ちながら、そして少しばかりの期待を持ちながら毎日子育てに追われていると思います。
大変な仕事を担っているお母さんに何も要望することはありません。
一言あるとすれば、今あなたが悩んでいることは、あなただけが特別に悩んでいることではなくて、だれもが経験をしていることですから心配 は要らないと言ってあげたいと思います。
不安になることはありません。一緒に考えて行きましょう。