初等学部の理事長で、幼稚園の園長でもある港先生の熱い想い

理事長・園長のちょっと言わせて

幼稚園のことを書こう

5年ぐらい前に認定こども園というのが新設された。実際に始まったのが27年が初年度だったから3年前になる。できるころには何度も県の係官から説明を受け一応は納得したつもりであったが、できあがってから国の「子供子育て会議」に預けられ、当初説明を受けた時とは全く方向が違ってしまっている。認定こども園は「幼保型」「幼稚園型」「保育園型」「地方裁量型」の四つに分けられていた。当然これらはそれぞれに役割があって目的が明確であった。私の園(土浦)も幼稚園型の認定こども園として出発した。

そもそもこのようなことになった背景には、少子化が進みこのままでは幼稚園の存続が危ぶまれたからにほかなかった。しかしこれは地方の幼稚園の話で、都会ではまったくそのような危機はなかった。認定こども園にする前には、国はよく幼稚園のことを考えてくれているなどと喜んでいたが、徐々にその真意が明らかになってきたのでがっかりすることが多々ある。第一に幼稚園型認定こども園というのは、幼稚園主導であるから今まで通りの運営方針で幼稚園として賄っていくことができるというのが大前提であったが実際はそうではなく、保育所の管轄である市の介入がある。

私のところでは2号認定(両親が働いている)は10人しか許可をとっていないが、そのために保育所としての縛りを受けることになる。これでは本来の幼稚園としての業務が縮小されてしまう。それはなぜかというと、認定こども園の就業時間は子どもを11時間預からなければならないというのがある。これには園則を変えなければならないが私はいまだに園則を変えていない。幼児教育というが幼児を出しものにして大人社会の仕組みを円滑にしようとしているだけで、子供たちにはいい迷惑である。

その理由を書こう。第一に子供たちはだれのために何のために生きてているのか。第二に子供達には大人の介入できない子供の世界があって誰しもが冒してはならないものである。第三にこの地球上の自然や人間同士のコミュニティなどは、すべて子供たちからの借り物ではないか。第五に政府は国民総生産を上げるために女性を社会に出し所得を得るように勧めているが、これは子育てに関して言えば誤った考え方で親子引き離し政策である。政府は80パーセントの女性を仕事に就かせたいと考えているらしい。これが幸せの政策だとしたらお笑い種である。

女性の社会進出の話をよくするが、女性の家庭内での貢献度は男性が会社でもらってくる給料に換算すればはるかに高収入である。なぜなら子供一人を家庭で育てている女性の月給は75万円に相当するといわれている。それが二人の子供だったらどうなるのか。しかも女性は産みの苦しみから解放されて0歳の子供を育てているときには、2時間おきぐらいに子供に起こされて寝る時がない。子供が静かになったかと思って自分が寝ようと思った時には、今度はそばで寝ている子供に寝返りか何かで踏みつけてしまうのではないかと熟睡する時がない。

 そうした努力があって子供が少しずつ成長していく。そして母親となった女性は何の見返りも求めず子供と共にニコニコと暮らしていこうとする。そんな小さな幸せをふいにあたかも災害のように、外へ出て働けというのではいつになっても幸せになれない国ニッポンになってしまうのではないか。外へ出て働くとか働かないとかいうのはその家庭に任せて政府が介入することではないだろう。

来年10月以降に幼稚園・認定こども園・保育所の3歳から5歳までの幼児は無償化になることがほぼ決定した。それに合わせて預かり保育も無償化しようという動きがある。私は無償化には全面的に賛成するが、モラルハザードの問題も一緒に解決しなくてはならないと思う。例えば必要以上に預かりを願ったり、子供を置き去りにしてしまう危険性があるからだ。私のところの現在の体制では預かり全面的に開放するというのは困難である。徐々に子供の内面を大切にしていく幼稚園が少なくなっていきそうな気がする。

子どもにとって必要な環境と教育というのが幼稚園教育要領に書かれているが、これすらも無視されて、待機児童解消のためにものすごい勢いで子供たちが流されて行ってしまう。誰かが立ち止まって流されていく子供たちを救ってやらなければならない。そのために私たちの幼稚園は懸命になって幼児教育を学んできたし、発達心理についても大学の教授のそばで学んできた。このまま流されたのでは私たちを育んでくれた多くの人たちに申し訳が立たないではないか。生きている証としての理念が大切だと私は信じている。これからが幼稚園経営の正念場になるのではないかと思っている。